「インフルエンザ・ワクチン接種と集団免疫」2018/11/16
そろそろインフルエンザの流行する季節ですが、今回はインフルエンザ・ワクチン接種と集団免疫についてお話します。
インフルエンザ・ワクチンにはインフルエンザ発症を予防する効果がありますが、残念ながら摂取したからといって100%の予防効果を期待することはできません。 より多くの方がワクチン接種をお受けになれば、接種の効果が低いとされる2歳以下の小児や重症化しやすい高齢者、そして基礎疾患などのためにワクチンを接種できない方なども集団免疫効果によって守ることができるのです。
集団免疫効果 をできるだけ高めるためにインフルエンザ・ワクチンは毎年継続して接種する必要があります。 その理由には二つあります。
- インフルエンザ・ワクチンを毎年継続して接種する理由
- 一つ目はインフルエンザ・ワクチンの多くは不活化ワクチンであるため効果が長く持続しないからです。 インフルエンザ・ワクチンの効果持続期間は概ね半年のため、翌年のシーズンにも効果を期待するためには毎年の接種が必要になります。
- 二つ目の理由は、流行するインフルエンザ・ウィルスのタイプが毎年少しずつ変化するため、インフルエンザ・ワクチンの成分が毎年異なるからです。
インフルエンザ・ワクチンには、インフルエンザによる学校での欠席日数や仕事の欠勤を減らす効果が証明されています。 また、インフルエンザによる入院を減少させたとの報告もあります。
- 集団免疫効果に関して
集団免疫効果に関してですが、インフルエンザ・ワクチンの83%の接種率が達成されている集団では、接種していない方もインフルエンザに罹りにくいという形で、集団免疫効果が証明されています。
接種対象者となっていない生後6ヶ月未満の乳児、アレルギーや基礎疾患があるためにワクチンを接種することができない集団などを守るためにも、より多くの方が予防接種を受けることによる集団免疫効果で社会全体が守られることを意識する必要があります。
なお、ワクチン接種をしても発症を完全に抑えることはできないし、発症したら抗ウィルス薬があるのでワクチン接種は必ずしも必要がない、という考え方はお勧めできません。
- インフルエンザを発症した場合
インフルエンザを発症した場合に、抗インフルエンザ・ウィルス薬を使うことによって重篤な合併症が防げるという直接的なエビデンスはありません。
抗ウィルス薬を使うことで発熱時間が約1日短縮するなどの効果は証明されていますが、抗ウィルス薬を使っても周囲に感染力があること、肺炎や脳症などの合併症が発生することも事実ですから、やはりインフルエンザ・ワクチンで予防することが重要です。
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