今回のコラム「PM2.5」(2016/01/25)
PM2.5(粒子の直径が2.5μm以下の粒子、微小粒子状物質)のお話です。注:1μm=0.001㎜
呼吸で人体に取り込まれた粒子の大部分は鼻腔・咽頭・上気道に沈着・排出されますが、粒径が小さな粒子ほど吸入されると気管・気管支のさらに奥の肺内の細気管支や肺胞まで到達しやすく、まだまだ全容は解明されていないものの、健康への影響が非常に気にかかるところです。
1990年代からアメリカを中心に、PM2.5の健康への影響に関する研究結果が多く報告されて以来、国際的に注目されるようになりました。 PM2.5濃度が上昇すると、その後の数日以内の死亡者数が増加するという報告も多数あります。また、喘息や COPD(喫煙が原因で、従来の肺気腫・慢性気管支炎という疾患)などの患者ではPM2.5濃度の上昇に伴い咳・喘鳴などの呼吸器症状の出現や肺機能の低下が認められます。一方、循環器疾患患者で、PM2.5濃度の上昇により脈拍の増加、血圧上昇、不整脈の発生などが認められるとの報告もあります。 さらに、観察期間中のPM2.5日平均濃度が9.7-27μg/m3の長期暴露で喘息の発症頻度が上がるという報告も多数なされています。
では、私たちとしては、PM2.5にどう対処すればいいのかということですが、環境省発表の【注意喚起のための暫定的な指針】では以下のようになっています。
注意喚起のための暫定的な指針
- 70μg/m3を超える場合
- 不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らす、高感受性者(呼吸器系や循環器系疾患を持つ患者・小さなお子様・お年寄りなど)は体調に応じてより慎重に行動しましょう。
【具体的な対処方法】
- 屋外での長時間の激しい運動や外出をできるだけ減らす。
- 屋内の喚気や窓の開閉は必要最小限にする。
- 特に、高感受性者では、体調に応じてより慎重に行動する。
- 高性能の防塵マスク(小さな粒子の吸入防止用)を空気が漏れないように着用する。
- 屋内での空気清浄機を使用。
- 70μg/m3以下の場合
- 特に行動を制約する必要はないが、高感受性者では健康への変化が見られることがあるため体調変化に注意しましょう。ただ、この指針では前述の低い値とはかなり異なる70μg/m3という高い値で区切られています。
それは何故かといいますと、アメリカの大気質指標(Air Quolity Index;AQI)ですべての人に対してある程度以上の健康被害を与える可能性があるPM2.5濃度として65.5μg/m3以上、ということが定められ、それに準拠して指針が定められていることにあります。
今回のお話しの内容のあらましを踏まえていただいた上で、前述の高感受性者に関しては、指針の平均値70μg/m3以下の場合でも影響が出る可能性がある、ということには十分に注意していただきたいと思います。
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